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【通信7月】最高裁判断から、定年後再雇用者の賃金【労働法】

【通信7月】最高裁判断から、定年後再雇用者の賃金【労働法】


 非正規と正規との労働条件の不合理な格差を禁じた労働契約法20条について争われた2件の訴訟について、平成30年6月1日に最高裁判所(最高裁)が判決を下しました。同条について最高裁が判断を示すのは初めてということで注目を集めていました。
 今回はN運輸事件から定年後再雇用者の賃金を考えてみましょう。


● N運輸事件(地位確認等請求事件)の概要

運送会社「N運輸」を定年後に再雇用された運転手3人が、「定年前と同じ仕事なのに給与が引き下げられたのは不当だ」と訴えた裁判。
一審の地裁の判決(平成28年5月)では、「再雇用制度を賃金コスト圧縮手段に用いるのは正当ではない」と判断。しかし、二審の高裁の判決(同年11月)では、「賃下げは社会的に容認されている」と指摘し、正当と判断(運転手側逆転敗訴)。

⇒ 今回の最高裁の判決では、正社員と非正規社員の賃金格差が不合理かどうかは、「賃金総額の比較のみではなく、賃金項目の趣旨を個別に考慮すべき」とする判断を示した。その上で、精勤手当については「相違は不合理である」と支払いを命じたが、その他の基本給や大半の手当については、3人に近く年金が支給される事情などを踏まえ、格差は「不合理ではない」として請求を退けた。


● 賃金項目の主な比較(最高裁の不合理かどうかの判断) *不合理は×

賃金項目 正社員 嘱託社員 認定ポイント
基本給 11~12万円 12.5万円 定年時の基本給を上回る
職務給・能率給 10.5~11.5万円 なし
歩合給 なし 7~12% 能率給係数の2倍設定
年齢給 200円/年 なし
× 精励手当 5,000円/月 なし
調整給 なし 2万円 老齢厚生年金(報酬比例部分)開始まで、
労働者の事情考慮
住宅・家族手当 あり なし 諸事情考慮
賞与 5ヶ月分 なし 退職金、老齢厚生年金支給前提
N運輸では嘱託社員は年収ベースでは正社員の79%の支給となっています。精励手当の支給がないことを除くと、会社側の主張が通りました。また、制度設計を労使の協議で決定され運用されていることも最高裁判断に考慮されています。
上記比較表を見てもわかるとおり、単に賃金引下げを容認した訳ではありません。

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